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スタジアムは「場所」から「ブランド体験」へ

〜長崎・福岡・北海道の最前線から読み解くスポーツビジネスの進化〜

■ 長崎スタジアムシティ「ピーススタジアム」:地域創生の旗艦モデル

キーワード:スタジアム・アズ・タウン/回遊型複合開発/市民との接点

長崎ピーススタジアム(Peace Stadium Connected NAGASAKI)は、V・ファーレン長崎が運営する“クラブ主導型都市再開発”の象徴ともいえる施設です。スタジアムとモール、ホテル、オフィス、教育機関を**「垂直統合」**したことで、以下のようなビジネスインパクトが生まれています。

主な示唆:

  • 収益多角化のロールモデル:試合日だけでなく365日稼働型施設として、スポーツ興行の枠を超えた経済活動が可能に。

  • 地域課題解決と共創型運営:地元大学や企業との共創を通じて、人材育成・観光振興・雇用創出にも貢献。

  • テクノロジー主導の観戦体験:Wi-Fi網やスマートチケット、視覚演出により、「試合を見に行く」から「ブランド体験しに行く」へと移行。

✍️ 考察:Jクラブに限らず、地方の中核都市が「スタジアムを中心とした都市再構築」に挑む時代が到来。これは公共事業の再定義にもつながる。

■ みずほPayPayドーム:球団主導ビジネスの完成形

キーワード:エンタメ一体型収益モデル/デジタル通貨/会員化によるCRM最適化

福岡ソフトバンクホークスの本拠地であるPayPayドームは、球団がドームを自前で保有・運営しているという点で、他球団と一線を画します。加えて「BOSS E・ZO FUKUOKA」を併設することで、単なる野球観戦ではなく**“1日中遊べる複合型エンタメ施設”**に進化しています。

主な示唆:

  • 垂直統合の成功例:ドーム・商業施設・チーム・EC・モバイルアプリが全て連動し、収益最大化とデータ取得が可能に。

  • キャッシュレスエコシステム構築:PayPayの導入により、スタジアム内の支払いは完全キャッシュレス化。これにより購買データの可視化→販促最適化が進行。

  • ボールパーク内マーケティング:来場者の滞在時間、移動経路、購入履歴などを用いたマイクロターゲティングが実装されつつある。

✍️ 考察:PayPayドームは「球団=コンテンツプロデューサー」「ドーム=プラットフォーム」という構図を最も体現しており、グッズ・フード・サブスクすべてに回遊が組み込まれている。

■ エスコンフィールド北海道:最先端“パーク型”ボールパークの破壊力

キーワード:MLB流輸入/民間主導/地方型エクスペリエンスデザイン

北海道日本ハムファイターズの新本拠地「ES CON FIELD HOKKAIDO」は、**日本初の“民間による球場建設”**であり、MLBのボールパークコンセプトを踏襲した設計となっています。

主な示唆:

  • 地方立地の強みを生かしたデスティネーション戦略:「試合があるから行く」のではなく、「あそこに行けば何かある」へシフト。

  • フィールド一体型の圧倒的没入体験:グラウンドが見えるホテル客室や露天風呂など、“観戦=ラグジュアリー”の新たな定義を提示。

  • グルメ・クラフトビール・地産品による地元経済との共生:観光型ボールパークとして、地域ブランドの育成にも貢献。

✍️ 考察:観戦体験のラグジュアリー化と、地方型スポーツ施設の再定義において、日本市場の限界を突き破る事例になりうる。

📌 総括:次世代スタジアムに共通する「3つの成功要素」

  1. 自前保有・自律運営による収益の自由度

  2. コンテンツ×テクノロジー×空間デザインの三位一体

  3. 日常回遊・地方創生との親和性

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